楽ゆる式◎セルフケア整体

心と体が楽になるコツ。辛い症状・病気を自分で治したい人へのヒント。 ----- by 楽ゆる整体&スクール代表 永井峻

「砂場の王」の孤独

「砂場の王」の孤独



砂場が好きだった。

とにかくヒマさえあれば、
小さな保育所のすみっこにある砂場に駆けつける。
いちばん熱中したのは、
4歳ぐらい(菊組)だったかな。

チャイムが鳴っても遊び続けて、
先生が自分だけを探しに来てくれるのも、
ちょっとうれしかった。

たたみ4枚を横に並べたぐらいの広さを、
細めの丸太が六角形に囲っている。
そこはいつも、5~6人の子どもたちが
ひしめき合っていた。

つくりかけの山を、うっかりした友達が
踏みつぶしてしまうこともある(そして泣く)

山を高くつくりたくて、かぎられた砂を
奪い合ってケンカになることもある(やはり泣く)

1つの最終目標である「トンネル」をつくるときに
湿気や固め方が足りなくて、全部崩壊することもある。
(もちろん泣く)


……なんて不自由なんだ!

「砂もスコップもスペースも、
 思うさまこの俺の芸術性を表現するには、
 あまりに不足している!!」

というような顔で、
楽しくて大好きなはずなのに、
砂場ではよく泣いていた。


そんな、ある日曜日。
昼下がり。

あまりにヒマで、
どれぐらいの足幅で立つのが一番かっこいいかを、
縁側で試していたとき……

「……あ! 今、砂場に行ったら、
 誰もおらんかも知れん。
 それはすごくいいかも知れん!!」

自分の思いつきに興奮したぼくは、
裸足のまま靴をはいて、保育所に走った。

まだ日も高くて明るかったけど、
「少しでも遅れたら、
ぼくより先に、誰かがいるかも知れない」
という焦りに襲われて、
とにかく急いで走った。

たった5分ほどのはずなのに、
いつもの道が、すごく遠く感じる。

あの角を曲がった先に、砂場。
どうか、誰もいないでいてほしい……


……


砂場には、
ぼくの望み通り、誰もいなかった。

「ひとりじめ」という言葉をそのとき、
もう知っていたと思う。

ぼくは自分の思いつきが
思い通りに進んだことに満足して、
喜び勇んで、大建築を始める。

いつもよりずっと広いスペースで、
いつもよりずっと多い砂を使って、
いつもよりずっと大きな山をつくる。

誰もぼくをジャマしない。
やりやすい。
踏まれない。
飛んできた砂が、目や口に入ることもない。

水道から緑色のホースを伸ばしてきて、
いい具合に、砂を湿らせる。
かっちりした手応えで、砂山がしっかり硬くなる。


今まで、
こんなに上手に「トンネル」を
つくれたことなんて、あったかな。
すごいな。

……でも、
さっきから、なんか変だな。

どうしてだろう。

今まで、
こんなに砂場が楽しくないことなんて、
あったかな。


なかったな……。


すごいことを思いついて、
思い通りの自由を得て、
予想以上のものがつくれたのに、
ぼくは、楽しくなかった。

砂場が好きじゃなくなったのかな……


なぜか、
そのとき受けたショックは、
もう少しで完成する山を壊されたときより、
ずっと大きかった。

砂場に走って来たときの明るい光景は
あんなにはっきり覚えているのに、
帰り道のことは、ひとつだって思い出せない。


次の日。

ぼくはやっぱりどうしても気になって、
おずおずと砂場をのぞきにいった。

あの角の向こうに、砂場がある。
今日は、どうだろうか。
ぼくはあのとき「どっち」を期待したんだろう……


砂場には、よく知った顔が5~6人いた。
いかにも狭苦しそうに、
お互いにギャーギャー文句を言いながら、
上手に完成しそうもない山をつくっている。
どの子も、泥だらけの顔をしている。

気が付いたら、走っていた。

全速力で砂場に飛び込んで、
友達にじゃれつく。
頼まれてもいないのに、山をつくるのを手伝う。
うっかり後ろを見ていない子のお尻を止める。
ホース係をかって出て、水流の強さを調節する。

いつもと違うぼくを変な目で見る子もいるけど、
ぼくは「あはは!」と笑い返すだけで、つづける。


楽しい!


お腹の奥で何かが跳ね回っているように、
わくわくする。
誰の山でもいいから、一緒につくればいい。
くずれたっていい。

なんでかわからないけど、
めちゃくちゃ、楽しい!


どうやらぼくは、
砂場が好きだったんじゃない。
砂場という場所にあるぜんぶが、好きだった。

うっかり入るジャマも、
限られた砂のやりとりや言い争いも、
勝ち負けの定まらない自慢大会も、
お互い白いところが残ってないほど汚れた体操着も……

ぜんぶあわせて、好きだった。



その景色を、覚えています。
そこに落ちていた宝物、
みんなで取り合いになったスコップの
まぶしい黄色まで。

大人になった今、
思い通りにいかないことがあまりに多いと、
もちろん、辛く疲れてくるんだけど。

心をあの砂場に飛ばすことで、
少し、深く息を吸えることがあります。

「思い通りの理想」からの引き算で、
今の現実の幸福度をはかっちゃいけないな。
だってそれは実際に、計算ミスだったんだから。

ぼくは限られた砂場を、楽しみたい。
楽しめる自分でありたい。
同じ砂場にいる人が、より楽しくなるようにしたい。
できれば、最高の砂場をつくりたい。


さっき公園の横を通ったら、
砂場なんてなかったんだけど……
だから余計にかな。

そんなことを、思い出しましたとさ。


ではでは、くれぐれも、お大事に。
体という砂場には、必要なすべてが埋まってる。

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でもね、
これを裏返せば、希望が見えてきます。
 

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