「寄り道より楽しい道なんて、そんなに多くねえぞ」
(生き方上手のじいさん)
何の得にもならない。
役にも立たない。
それでも、続けられる作業って、ありますか?
それが今回の主題です。
ぼくには「好きで飽きない作業」がいくつかあります。
それを淡々としていることが、
「すごく楽しい」というほど派手じゃないけれど、夢中になる。
静かに、幸せになる。
「作業興奮」ですね。
やってるうちにやる気がわいて没頭して……
氣が付いたら、けっこうな仕上がりになってる。
よくある例は、掃除。
やるまではおっくうだけど、
いったん手をつけたら夢中になって
ピカピカにしたくなったりする。
たしかな手応えと充実感が残る。
ぼくはこの「作業興奮」が、
「永遠に枯れないやりがい」だと思うんです。
夢や目標は、素晴らしい。
でも、叶え切ったら、色褪せてしまう。
「また次」が必要になる。
または、あまりに近づかなくて、重りになることだって、ある。
だから実は、そればかりを
「生きがい」や「やりがい」にしてしまうと、
燃え尽きがやってくるんです。
ぼくは何度かそれを、経験しました。
「あれ、終わっちゃったな……
なんか達成してみると、さみしさとか
むなしさもあるんだな」
とか、
「あれを目指してやっては来たけど、
ぜんぜん近づかなくて、息が切れちゃったな。
あんまり考えたくもなくなってきた」
とかってね。
でも、たとえばぼくの「作業興奮」である、
「やわらかくする作業が好き」というツボ。
これは、永遠なんです。
色褪せることがない。
ぼくが小さな頃からすごく好きなもの。
● チャーハン作るのが好き(やわらかく混ぜる)
● ストレッチが好き(やわらかくする)
● ツボをゆるめるのが好き( 〃 )
● 難しいことをわかりやすくするのが好き( 〃 )
氣が付いたら、
ずっとこれをやってるんです。
そこに重なる「途中の点」として、
仕事があったり、趣味があったりしてる。
でもやっていることはずっと同じ。
「やわらかくしてる」
それは終わりのない楽しみで、
ぼくはどうも、そういう男なんです。
楽しくない仕事があったら、
「まず、やわらかくしてみるか」ってことから始めたら、
もう「やりがい」が自動で湧いてくる。
わかりやすく整理したり、
自分がやりやすいステップに噛み砕いたり。
そうやって「やわらかくしてから始める」と、
自分になじんだやりがいが自然についてくるわけです。
便利でしょう?
もちろん、他の作業興奮も、
これから見つかるかも知れない。
きっと、誰の中にでも、あるんです。
ヒントは多分、
「流行り廃りがなく、なんとなく好きなこと」です。
子どものころ、何に夢中になってました?
他の人は面白くもないだろうけど、自分だけが面白いことって、ある?
どの作業をしているときは、時間がたつのが早い?
今、割と退屈せずやれていることに共通する要素は?
……そういう中で、きっと見つかります。
日々、少しずつ探してみるといいんじゃないかな。
何より、
「これがどうも根っから好きみたい」
という自覚は、大きな力になります。
大人になってから、そんな発見、
珍しくないですか?
でもきっと、子どもたち以上に、大切なんです。
「何が好きなの?」ってこと。
探さないと見つからないけれど、
探すと意外と見つかるもんです。
充実のツボ。
ぜひ、探してみて下さい。
というわけで今回は、
「淡々とした喜びほど心強いものはない」
というテーマでお送りしました。
ではでは、くれぐれも、お大事に!
ぼくの「順調な仕事」はすべて、作業興奮に接続してるなぁ。
■ 編集後記
かの有名な村上春樹さん。
「文章を推敲するのがめちゃくちゃ好き」
なんですって。
文章を削ったり、整えたり、濃くしたり。
それが楽しくて、文章やってるようなもんだって。
……ちょっとわかる氣がします。
客観的にみると、変態的だけどね(笑)
ぼくも、自分の本の原稿を直すの、
すごく楽しかったんです。
どっかでずっと考えてました。
「もっとやわらかくできないか」って。
子どもみたいな動機ですけどね。
たぶん、それだから枯れないし、
強いんだと思うんです。