……まったく、眠れなかった。
サッカー日本代表は、世界ランキング3位のベルギーに、
2-3で惜敗しました。
あるんですね、こんなにも純度の高いくやしさが。
「これは、勝てる!」と、何度、こぶしを握ったでしょう。
胸につよく刻まれたのは、
ベルギーとの差を聞かれた西野監督のことば。
「何が違ったのか……。
まぁ、すべてなんでしょうけど……わずかだと思います」
インタビューで、
こんなことを言っていました。
真実だと思います。
「決定的な違いを作る微差」
というのが、体にもあります。
ツボも、ほんの数ミリ位置が違うだけで、
ほんの数度、角度が違うだけで、
効き目の差は3倍にも4倍にもなります。
日本代表は、2ー0から1点返されて
2ー1になってから、
中盤のボールまわしに「小さなズレ」が出て来ました。
そのズレは(多くの要素はあるものの)、
「ベルギーが作り出したズレ」だと思います。
そのズレを、最後まで修正し切れなかった。
逆にベルギーは、序盤に日本に突かれたズレ(スキ)の
修正がとても上手だった。
じわじわズレていく日本と、
じわじわ整っていくベルギー。
中盤の「致命的なエリア」でボールを奪われるので、
ベルギーの決定的なチャンスの数は、
日本の比ではありませんでした。
(シュート数は、日本 11:24 ベルギー)
「修正力」
ぼくの目にうつった一番の差は、これでした。
その象徴が、
最後にトドメを刺されたロスタイムのカウンターです。
1手の無駄もなく、
最短距離で、日本の「ズレ」をついての、
劇的ゴール。
▼日本のコーナーキックの軌道を読んで
直接キャッチしたベルギーのキーパーの判断やスローも、
▼そのキーパーからボールを受けたつなぎ手も、
▼ゴール前のルカクにラストパスを送ったパスコースも、
▼それをあえて触らずにスルーしたルカクの視野もタイミングも、
▼スルーを見越して走り込んでいたフィニッシャーの判断も、
▼確実に間に合わない速度とコースのシュートも……
"一切のズレがないもの" でした。
その「決定的な微差」を
「全チームでまともに喰らうことができた」のは、
おそらく、初めての経験値だと思います。
なぜなら、そこまでの大切な「微差」は、
超強豪国が相手で、しかも「ギリギリの接戦」じゃないと、
現れないものだからです。
(現れる必要がないと、出て来ない)
その、
「喰らってみないとわからないリアル」を、
今回、切実に喰らったんだと思います。
かなりの数の日本国民も一緒に(笑)
そしてそれは、間違いなく、
今までは得られなかった、得がたい経験値です。
経験の奥行きが、ぜんぜん違うから。
「ベルギーを追い詰めるほどの深さまで
踏み込んだから、はじめて見つけた秘境」
みたいなものでしょう。
結果だけを言ってしまえば、
【日本は試合開始直後が1番強い状態】だった一方で、
【ベルギーは試合終了間際が1番強い状態】だった。
それはもうほんと「秘境に入っちゃった」
ような体験です(笑)
でも、今回、
「秘境があるということ」を知り、
「秘境はどんなものか」をある程度知れたわけです。
血肉に刻まれるような体感として。
強豪国はその「秘境の住人」なんでしょう。
昔からそこを知っている。
だから、監督やプレイヤーが変わっても、
強い国は、ずっと強い。
血脈に「秘境の知恵」が引き継がれている。
きっとそのレベルの歴史を、
日本は「ついに始められた」んだと思います。
ここまでの秘境まで行けたの、初めてですからね。
(現代サッカーでは)
ぼく個人としても、
1秒も画面から目をそらさずにサッカーを
見切ったの、はじめてだったかもしれません。
「決定力」という意味でいうなら、
日本の精度はベルギーを凌駕していました。
シュート数は、
日本11本に対して、ベルギーは24です。
ずっと「決定力不足」を叫ばれていたのにね(笑)
西野監督のおかげも大きくあり、
「分析力」
「作戦力」
「結束力」
「実行力」
「決定力」
「創造性」
そういったものは、ほんとうに、
驚嘆するしかないぐらい、高まっていました。
それこそ、序盤は世界の強豪を圧倒するレベルだった。
どこに出しても恥ずかしくないサムライ・クオリティでした。
ただ、秘教に踏み入ってからの「修正力」。
この差が唯一、埋めがたかったんじゃないかと。
ただ、ぼくたちが目にしたものは、
「手作りの奇跡」です。
「勇気をもらった」というレベルじゃない。
【挑戦者のお手本】 をもらった……
ぼくはそう感じました。
そして、ふってわいたような奇跡とは違って、
「手作りの奇跡」には、「レシピ」が残ります。
レシピがあれば、再現ができます。
あのサムライたちの血と汗の結晶たるレシピが、
これからの日本代表を、さらに強いものにしていくでしょう。
めちゃくちゃなくやしさと、
眠気の一切を吹き飛ばす感動とともに、
日本サッカーが次のステージに突入したことを、
確信しました。
最後に……
「もっとこのチームで、前に進みたかった」
原口選手が涙をおして語ってくれた
気高いスピリットを、
ぼくは決して忘れないでしょう。