「これが世界の壁なのか!!」
サッカーを見ていると聞こえてくる、この言葉。
大事な戦いで勝ちきれなかった理由として、
出て来ます……が!
「そんな言葉で片付けていたら、いつまでも勝てない」
って、ぼくは思います。
なぜなら、
問題を解決するための【突破口】を、
塞いでしまう言葉だからです。
日本代表は、ベルギーに負けました。
でも「世界のサッカー」や、
「世界の壁」に負けたわけではありません。
この区別は、とても大切です。
課題の正体をあいまいにボヤかしてしまうと、
解決できるものも、できなくなります。
問題を正確にとらえることからしか解決は始まらないし、
問題を正確にとらえたときには、すでに8割がた、
解決しているとも言えるほどです。
日本代表が負けた相手は、
「世界の壁」なんて正体不明のマボロシではなくて、
実態のあるベルギー代表です。
ちゃんとそこから始めて、
「ベルギーの何に負けたのか?」
「何が決定的だったのか?」と、絞っていきたい。
「アザールにやられた」という仮説があってもいいですが、
「アザールの何が決定的だったのか?」
「アザールの決定的な仕事を止められなかった原因は、何か?」
と、絞っていきたい。
そうやって、
「個別かつ具体的に絞り込んだ点」だからこそ、
【突破口】になりえます。
弱点って文字をよく見たら、
「弱」い「点」ですよね。
点の話をしているんです。
大きな壁を突破するときというのは「一点」から始まります。
「ここでなら、勝てる」
という点を、徹底的に強化していく。
水をせき止めているダムに、1つでも穴が空けば、
その穴がみるみり広がって、やがて
ダム全体が壊れてしまうのは、ご存じでしょうか。
【一点突破】という言葉が、すべてを表していますね。
キリで穴を空けるように、
ギュッと点まで絞った力だからこそ、分厚い壁を突破できる。
だから、
目の前にベルギーという具体的な対象があるにも関わらず、
「日本は世界の壁を超えられなかった」
といった言い方をくり返していては、いかんのです。
そしてこの問題はもちろん、
サッカーに限った話ではないんです。
たとえば……
「俺は現代社会には適合できない」
「東京さは、怖いとこだぁ……」
「ぼくは女性が苦手だ」
「私の肩こりは全体的なもので、治らない」
と言っているうちは、
問題が解決しない感じがしませんか?
それどころか、
解決することを放棄しているようにさえ、見えませんか?
何がポイントかというと、
この種類の言い方は、
「自分で敵の存在を大きくしてしまっている」んです。
到底勝てないイメージに、増幅してしまっている。
「現代社会」も「東京」も、
そのすべてが適合しずらく、すべてが怖いところ、
というわけではありません。
場所によって人によって、全然違います。
女性だって同じです。
苦手な女性と、そうでない女性が必ずいます。
肩こりにも、「決定的な一点」が必ずある。
全体が本当に悪くなっているなんてことは、ほぼありません。
(だとしたら、動かないはずですからね)
【拡大解釈】
これが、ぼくらの問題をムダに大きくして、
【突破口】を覆い隠す、本当の敵です。
「正体」がわかれば、打ち手は見えます。
弱点がわかれば、突破口になります。
敵がかなり強いとき、
ぼくたちが【拡大解釈】をしがちだということを、
まずは知っておきましょう。
知っているだけで、ぜんぜん違います。
落とし穴がどこにあるかわからなくても、
「このフロアには落とし穴がある」とわかっていれば、
事故は相当減らせますからね。
この「つい拡大解釈しちゃう傾向」を、
わかりやすいように「世界の壁病」と呼んでもいい(笑)
そして、
「これは到底かなわない」と思うような問題に
直面したときこそ、思い出してほしいんです。
それは「世界の壁病」なんじゃないか?
「その問題のどの部分が一番のポイントか?」
「その問題にも弱点はあるんじゃないか?」
と質問で絞り込んでいけば、
【突破口】に辿り着きます。
恐れる前に、
取り組む前に、
問題自体を絞り込んで「小さく」してしまえばいい。
「ベルギーにも弱点はある」
と西野監督が言ったとき、
こりゃあ勝つかもしれんぞい、と思いました。
点がわかれば、力を集中して、突破できる。
点がわかれば、力を集中して、守ることもできる。
せっかく西野ジャパンが全身全霊で示してくれた、
「突破のコツ」を、
まわりがうやむやにしちゃあ、もったいないですよね。
「世界の壁」なんてものは、幻想です。
その幻想に負けなかったチームが、
圧倒的な強者に勝利しています。
実在したのは、
コロンビアの壁、
セネガルの壁、
ポーランドの壁、
そして、
ベルギーの壁です。
必要かつ有効なのは、
「実在する壁」をちゃんと見て、
突破口を探すことです。
「世界の壁をどう超えたらいいのか?」なんて
あいまいな問いでは、ロクな答えはでてきません。
「何がポイントで、コロンビア戦で失点してしまったのか?」
「何を変えていたら、セネガルに勝てたはずだったのか?」
「ポーランド戦で先取点を取られた原因は、何だったのか?」
その具体的な問答の積み上げこそが、
突破口になります。
変に「でかい話」をするのは、やめましょうね。
あなたの問題は、何でしょうか?
あなたの症状は、どこで起きていますか?
その問題の弱点は、何ですか?
自分の心にある想像の壁じゃなくて、
目の前に実在するリアルな壁を、しっかり見ていきましょう。
その壁にひっそりとでも必ずある、穴を探そう。
力を集めて、一点突破しよう。
小さくても風穴があけば、
向こう側が見えます。
それだけでも、ずいぶんと、息がしやすくなるからね。
手強い相手と渡り合う鉄則は、
【一点突破】です。
お互い、
「世界の壁病」に、気をつけましょうね。