「永井先生も、チョコレート、食べるんですね」
先日、チョコのことを書いた結果、
驚くほど多かった反響が、これです。
……いやいや、食べますって!(笑)
ポテチも、フライドポテトも、モスバーガーも、
「昔ながらの中華そば」も食べますよ。
「いつになったら、味覚が大人になるのか……」って
真剣に考える夜もあるぐらいです。
でも、そんな中で、ふと思ったんです。
ぼくという人間が、嫌になるぐらい凡人で、
本当に良かったなぁ、と。
中田英寿、イチロー、桜井和寿。
ぼくにとって、彼らはスターでした。
疑いようもない天才です。
あんな風に、ずっと、なりたかった。
でもぼくには、できませんでした。
サッカーも、朝カレーも、ギターもやってみたけど、
どれ1つとっても「そこそこ」でした。
でもね、理想だけは高かったんです。
今思い出しても、なるほどなぁって思うんですけど、
高校のとき、1度だけ、
プロのサッカー選手と対戦したことがあるんです。
フォワード(攻める人)で、まだ20才前の人でした。
高校のコーチの元教え子で、ある日突然、
練習に参加してくれたんです。
「おい、誰か、プロと一対一の勝負をしたいやつはおらんか!」
ってコーチに聞かれたとき、
迷わず手を上げたのは、ぼくだけでした。
……結果、
くそみその、ボロ負けです(笑)
15回ぐらい一対一の勝負をしたんですが、
まったくついて行けません。
「あんた、2倍速け?」というレベルで、
異常に速いんです。
判断も、フェイントも、切り返しも、シュートも。
それでも、
たった1回だけ、彼を止めることができたんです。
そのときのぼくは、
タイミングを見計らって、
両脚を「V」の字に広げて自分から倒れ込み、
相手の進路を防いだんです。
そんなことするサッカー選手はいないので(笑)、
ふいを打たれた彼はさすがに驚いて、
ボールをぼくに奪われました。
その1回だけです。
そんなぼくを見て、同級生の仲間は、笑いました。
「そこまでするか!」と。
たしかに、誰もやらないような、みっともないマネだったかも
知れません。
ただぼくは、真剣でした。
「自分の2倍速で動く生き物を止めるにはどうしたらいいか?」
それを本気で考えたら、それしか、なかったんです。
たった1度だけボールを奪われたプロの彼は、
はじめてぼくの目を見て、
少しだけ、ニヤッとしました。
あの顔が、忘れられない。
その後、彼のスピードは、3倍速になったのです。
ぼくに「V字ディフェンス」を出すスキさえ与えず、
彼のドリブルは冴え渡りました。
ボッコボコです。
手も足も出ない。
でも、ぼくの真剣さに、彼は応えてくれたんです。
めちゃくちゃに負かされたけど、
あんなに楽しいことは、なかった……
「負けて当たり前なのに、なんであそこまでやるの?」
終わった後、仲間のひとりに聞かれました。
ぼくはちょっとハラを立てながら、答えました。
「相手がサッカーの神様のジーコだろうと、
負ければ悔しいと思う」
さっきまで笑っていた仲間たちは、黙りました。
当時からぼくは、わかっていたんです。
才能では、勝っていけないと。
だって、弱小校の同学年にさえ、自分より上手なやつが、
3人以上もいるんですからね(笑)
でも、だからこそ、
「やる気だけは、負けてはいけない」
と、自分にいつも言い聞かせていたんです。
……まぁ、後日、
それが祟って、膝の靱帯、伸ばすんですけどね(笑)
そうやって、痛いほど、
自分の凡庸さとケガを抱きしめて、
大人になりました。
でも、
自分がケガばかりしてきたから、
7才から腰痛があったから、
ぼくは整体師になりました。
自分が自律神経失調症になったから、
今、体だけではない悩みを持つ人に、
伝えられる何かを得ました。
ぼくは、凡人で、良かった。
何がプラスになるかって、本当に、わかりませんね。
今すごく嫌なことが、10年後、大きな糧になってるかも知れない。
20年後、なくてはならない出発点に変わっているかも知れない。
所詮、スーパーで買えるチョコレートが大好きな男で、
本当に良かった。
そういう人間だから、よく思うんです。
「天才の言うことは、凄すぎてマネができない」
って。
整体の世界にも、天才、いっぱいいますからね。
教わっても、すごく難しいんです。
常々、思うんです。
「すごい天才の話」には、聞き応えがある。魅力もある。
でも、世の中の98%は、自分と同じ、凡人です。
「ある程度できるようになった凡人の話」のほうが、
ずっと生活の役に立つことがある。
だってマネできますもんね、「やり方が凡人向け」だから。
改めて、これからも、
誰でもマネができるような簡単なお話を、
お伝えしていきたいと思います。
チョコレートの次は、何かなぁ。
ではでは、くれぐれも、お大事に。
天才への憧れは、消えないんですけどね。