楽ゆる式◎セルフケア整体

心と体が楽になるコツ。辛い症状・病気を自分で治したい人へのヒント。 ----- by 楽ゆる整体&スクール代表 永井峻

重度の「うつ」を救った、スリッパ。

重度の「うつ」を救った、スリッパ。


「何が、自分のベストなんだろう……」

そう悩むこと、あるよね。

ぼくも、ずっと思ってきた。
「腰痛が、何をしても治らなかった」ときは、
特にこの思いが、強かった。

 
●いったい何をしたら、少しでも良くなるのか。
●そもそも、何が原因なのか?
●どうしてこんなに長い間、辛いのか。
●今のやり方が、ベストじゃないんじゃないか?
●何が、本当のベストなんだろう?

迷う。

あまりに改善が見られないから、
「手応え」も「手がかり」も無く、もがく。
気持ちばかり焦って、疲れてしまう。


長く苦しんだことがある人には、
「ある、ある」と思う感覚じゃないかな。


でも、あるとき、
ぼくは、自分の勘違いに気づいたんです。

きっかけは、
あるカウンセラーが教えてくれた、
たった1つの実例でした。

その男性は、
うつが重くて、仕事ができなくなっていたそうです。
朝から晩までずっと無気力で、対人恐怖もあり、
バイトさえ考えられない。

最初のカウンセリングのときなんて、
目を合わさないどころか、
質問への答えもボソボソとして、ほぼ聞き取れない……
自分にも社会にも、絶望している。

でも、その「先生」に出会って、
彼は変わり始めます。

少しずつ力を取りもどして、
ついには社会復帰。
以前は決して見せてくれなかった笑顔で、
先生にお礼を言って、卒業していきました。

何が、彼を変えたのか?


すごい薬?
新しいセラピー?
なんかNASA的なサプリ?


……いえ、
正解はそれらのどれでもなく、
「スリッパ」でした。


「先生」が彼に提案したのは……
「トイレのスリッパを、きれいに揃えるようにしましょう」
ということだったんです。
逆にいうなら「それ以外は、今まで通りで構わない」と。

本人もすごく戸惑ったそうです。
「そんなことで、この重いうつが治るんですか!」って。
そりゃあ、そうですよね。
でも、先生を信じて、とにかく続けたんです。

トイレに行ったら、必ずスリッパを揃える。

何にもやる気がないときでも、
外に出る気力がないときでも、
食欲がないときでさえ、
スリッパは、揃える。


……それなら、できる。


そう、これが大事だったんです。
「これなら確実にできる」
「間違いなく続けられる」
という日常動作が、彼の心を整えていったんです。

スリッパを揃えることが習慣になったら……

●毎朝、服を着替える
  ↓
●夜、服を着替える
  ↓ 
●朝、だいたい決まった時間に起きるようにする
  ↓
●夜、だいたい決まった時間に寝るようにする
  ↓
●週に3回は、コンビニに行く


……そんなふうに、
「それなら、できる」ということを、
少しずつ少しずつ、広げていったそうです。

それがやがて、
外出になり、
面接になり、
バイトになり、
仕事にまでなっていった。

その間、彼は「できること」しか、やらなかった。
先生は丁寧に彼の話を聞きながら、
「できること」を、1つずつ一緒に決め、応援した。


そうやって彼は、
「何もできない」ような状態から、
ご家族が泣いて驚くほどまでに、回復しました。

そんな奇跡のような変化の始まりは、
「スリッパを揃える」ことでした。



ぼくは、この実話に、感動しました。
そして、すぐその後に、反省しました。

「ベスト」の意味を、
ぼくはずっと、勘違いしていたんです。

ベストを「最高」だと考えると、
間違うんだね。
「すごくすごく良いもの」が見つかったら、
魔法のように、自分を治してくれるはず……
そんな幻想に、溺れてしまう。

ほんとうは、
体調も体質も性格も、人それぞれなんだから、
みんな共通の「最高」なんて、ない。
存在しない。

その「存在しないベスト」を探し続けちゃうと、
見つかるわけがないから、磨り減るんです。
心も気力も。

実は「ちっとも改善しない症状」よりも
「永遠に見つからない探しもの」に
疲れてしまってたりも、する。


気づけばぼくは、そうだった……

これじゃあ、なかなか、良くならないよね。
だって、目の前にあるものに対して、
「最高じゃない」「本当はこれじゃない」って
思っちゃってるんだから。

身が入らない、氣が入らない。
効果は出ない。

「最高幻想」とでも呼びたい誤解によって、
大事な可能性が、殺されてしまってる。

その誤解はもう、やめる。
今、やめてしまおう。


じゃあ、ほんとうのベストって、何なのか?


きっと
「最適」なんです。

最も高きもの……じゃなくてね、
最も適するもの。
他の誰でもない、あなたに。

望みうる限り1番良いものじゃなくて、
あなたに可能な限り合うもの。

そっちのほうが、いい。
遥かにいい。


うつから回復した「彼」にとって、
どんなセラピーや薬よりも、
「スリッパ」のほうが効いたように。


それこそ、
ひどい風邪をひいて胃腸が弱っているときに、
「世界一体にいいお肉」なんて、必要ないもんね。
どうせ消化できないんだから。

むしろ、
「ただのおかゆ」のほうが体にいい。
栄養も効能も、深くまで、染み入ってくれる。

だったら、
「世界一のお肉」よりも、
「単なるおかゆ」が、その人のベストだもんね。


こういうことが、
この世には、ゴロゴロしてる。


手が届かない……
または、存在しないかも知れない「最高」を探して、
身の回りにある「最適」を、台無しにしてしまう。

おかゆで充分なのに。
おかゆが、ベストなのに。


だから、忘れないでいたいと思うんです。


「ベスト」は、今できることの中に、必ずある。
なぜなら「今すぐできる」ということも、
最適さの1つだから。

今できない「ベスト」なんて幻想です。
それは「誰かのベスト」であって、
あなたのものではない。
他人を見て間違った比較をしていると、望んだ場所には行けない。
1番大事なものをスルッと見逃して……
下手をすると蹴飛ばして、
「全然望んでない場所」に着いちゃうよね。


だから、
「最高」じゃなくて、
「最適」を望もう。

今、手元にあるもの、足元にあるものから、
「一歩だけ先に行けるもの」を、探そう。


何歩も先とか、
上空とか、世界に1つだけのとかじゃなくて、
「今、手元にある、おかゆ」を
大事にする。

とにかく
「スリッパ的な何か」を揃えることから、始める。


それ以上のベストって、
本当は、ない。


ただ、
体調がよくなるにつれ、
成長して行くにつれ、
「それなら、できる」の「それ」のレベルが
自然に上がっていくだけの話。


まあ、要するに、
「高い壁を登るんなら、階段を使おうぜ」
って話だね。

階段を用意してくれる「先生」もたまにいるけど、
できれば、自分で「階段化」できる人に
なったほうがいい。


今、自分のベストを、正しく探せてますか?

誰かと比べて自分の「ベスト」を勘違いしてない?
誰かに「ベスト」を決められちゃってない?

「なんかものすごいやつ」じゃなくて、
「今の自分にできる、確実なやつ」を
大事にできてる?


でっかい目標を、
でっかいまま見上げるんじゃなくて……

そこにつながる1段1段の階段を、
ちゃんと見て、踏みしめてる?


あなたの手元、足元に、必ず「今のベスト」があるよ。
そこにしかないから、安心して。


ではでは、くれぐれも、お大事に。
「基礎こそ奥義である」って話に、似てるね。