ぼくらはサルたちと違って、
どうして「体毛」が薄いのか。
―― 考えたこと、あります?
ぼくは先日、答えを知りまして……
それがね、すごく面白かったんです。
そもそも、毛って、
大事なところに生えますよね。
ケガすると「出血がひどい」ようなところ。
たとえば、
頭だったり、ワキだったり、局部だったり。
……あ、
ちなみにこれ、
「整体あるある」なんですけど、
腰がすごく悪い人は、腰に毛が生えてきたりします。
ちょっとビックリするよね(笑)
つまり毛は、
「体を守るためのもの」なわけです。
実際、スキンヘッドの人は、
頭をケガしやすいという報告もあります。
としたら、
サルたちと比べて体毛が薄いぼくらは、
「防御力」が退化している?
――うん、そう、
そこだけを見ると、そうなんです。
ただ、防御力については、
「服」を着ることによって、補ったわけです。
じゃあ、
そんな大事な「体毛」を手放してまで、
ぼくらの祖先は、何を手に入れたのか。
それは、
『持久力』
なんです。
ここがポイントでね……
どうして、
体毛と持久力が関係するのか。
たとえば、
体毛が濃い動物は、すぐ熱が体にこもってしまって、
長く走り続けることができないんです。
なぜってね、
そもそも毛皮って、温かいでしょう?
だから、走ると汗をかきやすいわけです。
しかも、汗をかいたらかいたで、
体毛が水分を吸ってキープしてしまうから、
蒸発が遅れる。
すると、ますます熱がこもる。
ちょっとしたダッシュでも、すぐ燃焼しきってしまう。
そのせいで、有名な例ですけど、
チーターは短距離しか走れないわけです。
(最高速度は120kmだけど、
一度に走れるのはたった60秒ほど)
その点、ぼくらは真逆だよね。
そりゃあもう、
チーターからぼくらを見たら、
「お前ら、なんでそないに裸やねん!」
ですわ。
でも、それこそが、
ぼくらの狩人としての〝強み〟だったんです。
体毛が無いから、
どんどん汗をかいて蒸発させて、熱を外に出せる。
おかげで、
めっちゃ長距離でも走り続けられる。
獲物より「速く」はないけれど、
「長く」走れる。
追って追って追い詰めて、
ぼくらより先にバテた動物を、捕まえる。
そうやって生き残ってきた遺伝子が、
ぼくであり、あなたなんです。
この事実、面白くないですか?
つまりぼくら人間って、
「長期戦」をするデザインになってるんです。
「短期決戦タイプ」では、決してない。
だから、
急いで何かを変えるとか、
すぐ結果を求めるとか、
一発で大きな成果を出すとか……
「そういうタイプ」じゃあ無いんです。
そもそも、種族的に。
だから、慌てなくていい。
これはたぶん、
人類の99%に有効なアドバイスなんです。
大事なのは、
あくまでも自分のペースを見つけて、それを守ること。
そんなに速くなくていいから、
獲物が足を止めるまで、走り続けることなんだ。
――そんな風に、
ぼくらをつくったデザイナーに、
言われてる感じがしてきませんか?
ぼくはよく思うんです。
仕事でも趣味でもね、
「5年でも10年でも平気で続けられるマイ・ペース」を、
知っておきたい。
それを基準にしたい。
無理をする時期がいっとき、あってもいい。
でも、その時期を過ごしたら、
自分の基準に戻そうとしてほしい。
もしどうしても戻せないなら、
それは「あなたの道」ではないかも知れない。
厳しいことを言うようだけれど、
そこを無理し通して何かが壊れてしまう人生よりは、
やさしい選択ができるはず。
「そこを無理しちゃった人たち」を、
たくさん見てきたから、ね。
ぼくらは長距離ランナーです。
陳腐なたとえだけど、間違いはない。
「今だからできること」と、
「老後になっても続けられること」の配合を、
たまにちょっとだけ、真剣に考えたい。
ちなみに、
ぼくが独立してすぐの頃に決めたのは、
「70歳になっても無理なくやれる施術をしていく」
ということでした。
そして、
そう考えて来て本当に良かったって、
思ってるんです。
ぼくらの体毛が薄いのは、
「持続可能な走り方で生きなさい」
って、メッセージなのかもね。
ではでは、今日もお大事に。
「体が教えてくれること」って、やっぱり面白い。