楽ゆる式◎セルフケア整体

心と体が楽になるコツ。辛い症状・病気を自分で治したい人へのヒント。 ----- by 楽ゆる整体&スクール代表 永井峻

オリンピックがくれた最大の資産は「勇姿」だと思う

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オリンピックが、終わりました。

数多くの問題をはらんだお祭りでしたが、
今回は特別に強烈な「おみやげ」をもらったと感じています。

そのおみやげというのは、
「姿」です。

 


エネルギーに満ちた選手たちが、
命を燃やさんばかりに集中し、躍動し、静止する姿。
「有り様」と言い換えてもいいかも知れません。

おそらく、
これから500年先まで考えたって、
もう二度とないでしょう。

自国開催という得がたい追い風と、
コロナという未曾有の向かい風が共存した大会。

そのために、
今回のオリンピックに出場した選手たちは、
「大会開始前」からすでに、
今までになかったサイズのハードルを、
超えて来ていたんだと思います。

だから……でしょうか。

選手たちがメダルを手にしたときの喜びも、
メダルに手が届かなかったときの無念も、
まるで隔てるものが何もないみたいに、
クリアに伝わって来ました。


嬉しかったし、悲しかった。


つい先日ぼくは、
「かなり辛いけど我慢するしかないこと」を
体験しました。

これを説明し出すと
原稿用紙200枚ぐらいの長文が必要なので、
どうしようかな……
えーっと……誤解を恐れながら仕方がなく
ごくごく簡単に言うと……


「ひげ脱毛のラスト回」
(12回目)


です。


正直、超痛いです。


「最後ですから、出力、マックスにしましょうね!(にこにこ)」
「何かあったら困るので、イヤホンははずして下さいね(にこにこ)」

そういって、
向井理も真っ青なピカピカ白肌若造が、
ちょうど「ツキノワグマも0.5秒で気絶させるスタンガン」
そっくりなマシーンを構えて、こっちを見ている。

気休めのイヤホンなど今すぐはずせ。音楽になど逃げるな。
最後ぐらいサムライらしく、痛みをすべて受け入れろ……と、言っている。
(言葉じゃないよ? 顔でね)


で、ご存じの人もいるかも知れませんが、
脱毛って、痛くないところから始めて、
どんどん痛いところに向かって進むわけです。

まあ要するに「死へのカウントダウン」ですわな。


ピピ・・・スパンッ!

というこの「スパンッ!」のときに、
北海道の雄ヒグマでも一発でメニエール病になるような閃光が
視界を真っ白に染めます。
(目隠し見たいのを着けてるけど、それでも)
そして、毛が焦げるときの独特の嫌な匂い……。

その果て無きくり返しです。

痛くないところはさておき、
中盤ぐらいからは、
「輪ゴムを3つ、ギリギリまで伸ばしに伸ばした末に、
 一気に指を離して顔面にバチンッと当たる」感じの
痛みが連続します。


(おいおい、中盤でこれかよ……)


心の中では、
「最後ぐらい男らしくやり通そう」という天使と、
「ここまでやってきたんだから、もう途中でやめてもいいじゃないか」
という悪魔が、同居しています。

ただ、ダメージが深刻なために、2人とも、えらく大人しいの。
議論があんまり進まないうちに、

ピピ・・・スパン!
ジュー……ドクドク……プスプス……シュワー……。

が、来るから(後半はイメージ)、
葛藤のうちにメンタルが削られるいっぽうで、
戦う気持ちも逃げる気持ちも、固まらない。

そんなとき、
ぼくの脳に急に現れたのは、
「サッカー日本代表がスペイン代表と戦う姿」でした。

延長戦、最後の最後まで、
本当の一流チームを相手に、一歩も引かなかった。

正直、実力はふた回りぐらい、向こうが上です。
でも、それこそ鉄の精神力で、互角の戦いをしていた。

……その姿が、見えたんです。


うん、たしかに、痛い。

もはやファイヤー地獄も終盤に差し掛かり、
「5つの輪ゴムをマックスまで伸ばした分のバッチン」
ぐらいの痛みが、波状攻撃を仕掛けて来ている。
音も光も、並のクマならとっくに気絶しているレベルだ(たぶん)


……でも、それが何だっていうんだ?

こんなことぐらいで弱気になっていたら、
彼らに合わせる顔がない。
(※彼ら=日本代表チームね。クマたちじゃなくて)


コンマ3秒ぐらいの刹那、そう思ったぼくは、
「バチン!」という電気ショック
(シロナガスクジラも一発で反省するレベル)のたびに、
頭の中で「よし!」とか「もっと来い!」とか、
とにかく大声で叫んでいました。

そしたら、痛みなんか全然平気だった……

……

…………

とは、言いません(正直ね)


でも、気持ちが全然違いました。

「強敵に対して弱くなる自分」が影をひそめ、
「強敵だからこそ強くなる自分」が顔を出します。


すると、
痛みに耐える作業にも余裕が出て来たので、
【痛みを減らす呼吸法】をつくり始めました。

どのタイミングで、
どれぐらいの量を、
どれぐらいの速度で吸ったり吐いたりすれば、
痛みはマシになるか?
舌はどう使う?
歯はどうする?

そんなテストを始めたのです。
もちろん、その間も、銃撃が病むことはありません。


……でも、それが何だっていうんだ?



結局、出力マックスにも関わらず、
感じた痛みはいつもの40%オフ、
感じた時間の長さはいつもの30%オフ、
脱毛効果はいつもよりだいぶんオン(なはず)、
得たおみやげは「最高の呼吸法」というスタッツ(数字結果)でした。


「永井さん、よく頑張りましたね。
 これで卒業です!!」

ぼくからイヤホンを取り上げた
スパルタ若造(=仮想アセンシオ)は、
施術前よりも笑みを深めて、言いました。


『……ええ、なんか、不思議な達成感がありますよ』


そういって、
ぼくのヒゲ脱毛の閉会式は、幕を閉じました。



……さて、何が言いたいか?



ひげ脱毛は、マジで痛い。



まずは、そのことです。



……ただし、そのこと以上に言いたいのは、

「脳裏に鮮明に刻まれた選手たちの姿」が、
いかにぼくに大きな力を与えたか、
ということです。


今回はどうしても
「ひげ脱毛」というノンフィクションでしたから、
陳腐な笑い話に見えたかも知れません。

でもね、そんなことじゃないの。

たとえば、
ぼくが直面するのがひげ脱毛じゃなくて、
打ち手が浮かばないほどの難しい難治性の患者さんだったとしても、
10億の投資案件だったとしても、
富山に帰ったときにマジの偶然に出会うクマだったとしても……

ぼくは同じように、
自分の中からは出てこなかったはずの強いエネルギーを、
「代表選手たちの勇姿」から、もらったと思います。



それで、考えたんです。

今回のオリンピックで、ぼくらは何を得たのか。

経済効果や国としての信用がどうとか、
そういったものとは全く関係なく……

ぼくら個人個人の脳裏に刻まれた
「選手たちの勇姿」こそが、
替えがたい価値を持つ資産なんじゃないか。

きついとき、耐えなきゃいけないとき、
もうひと握りの踏ん張りが求められるときに、
ぼくらを支えるもの。
それは間違いなく、永続する資産です。


「成功するイメージを持とう」なんてことが、
自己啓発やビジネスの世界でよく言われます。

しかし、
その架空のイメージ作業が上手にできない人も多いし、
上手にできたからといって有効に働くとも限りません。


ただ、
「誰かの勇姿」だったら、話はまったく違います。
本物を見たのだから、必ず思い出せます。
上手も下手もない。
当時ぼくらの心をたしかに動かしたものなのだから、
ほとんどの人にとって、特別な力を持つでしょう。


「勝った姿」が、気持ちを鼓舞してくれるだけではありません。
「負けた姿」が、落ち込む肩に手を添えてくれることもあるでしょう。
「立ち向かう姿」が、勇気を生むかも知れない。
「耐え忍ぶ姿」に、励まされたり、
「泣きじゃくる姿」に、後悔を残さない決意を得たりもするでしょう。


ぼくは、サッカーの代表に限らず、
多くの選手たちから、そういう「資産」を
もらったように感じています。


だから、
今まで見てきたどのオリンピックよりもはるかに、
喜びが大きかった。
無念も大きかった。
でも、それが有り難かった……。


そして、
サッカー日本代表が4位と決まった、夜。

悔しさと涙を隠そうともせずに、
むしろ「味わい切る」かのようだった久保くんの姿に、
ぼくは胸を打たれて息苦しいほどでした。

選手たちのインタビューですごくたくさん出て来た言葉に、
「楽しむ」とか「切り替える」というものがあります。
それももちろん、試合への備えとして、大事なことでしょう。

でもきっとそれと同じかそれ以上に、
「噛みしめる」という儀式が、重要なんだと思います。
痛みをそのまま痛みとして、自分にあえて刻むように、覚えておく。
この景色を、この「有り様」を、決して忘れないように。

ぼくが見た久保くんは、
真っ直ぐに、そういう姿でした。

敗戦後のインタビューでも、
決まり文句にもポジティブ・ワードにも逃げず、
どれだけ重かろうと本音をしぼり出すように話す……
泣かずに済む言葉選びなど、賢い彼なら、わけもないでしょう。
でも、決してそれを、しない。

その有り様は、
彼がずっとリスペクトしていた先輩に対しても、
彼をチームの中心として信頼し続けた監督やチームメイトに対しても、
彼を応援していた視聴者に対しても、
痛ましいぐらいの誠意であふれていました。
20歳の彼は、どの深さまでを自分の責任と考えていたんでしょう……

あの誠実さでカチコチに固めたような憤怒の姿。
忘れようにも、忘れられません。

ただ、彼が得た「資産」はそれだけ、
誰よりも強靱なものになっていくはずです。



さて、途中から久保くんのことになると
話が脱線するどころか、
そこを本線とした特急に気持ち良く生まれ変わったわけですが、
要は「有り様」です。

こんなふうに考えてみたら、
「人の有り様を、刺し身のようにナマで見せてくれる」
という意味で、スポーツがもつ力って、
やっぱり偉大だなぁ……


今回のオリンピックで一番思ったのは、そのことでした。


真剣に立ち会って目撃した「勇姿」は、
ぼくらの血肉になるものとして「経験値」に数えても
いいぐらいかも知れないね。


これからもあなたを支えてくれそうな
「勇姿」は今回、誰のものでしたか?



ではでは、くれぐれも、お大事に。
できれば「ひげ脱毛」以外の実例で、
これを説明したかったなぁ……。