楽ゆる式◎セルフケア整体

心と体が楽になるコツ。辛い症状・病気を自分で治したい人へのヒント。 ----- by 楽ゆる整体&スクール代表 永井峻

「歯が1本も無い」じいさんの教え


前に見たドキュメント番組でね、
えらく魅力的なじいさんがいたんです。

80才ぐらいのかたで、
「昔、すごいハンサムだったんだろうなーーー!」
って思うような顔立ち。
目が黒々としててきれい。
総白髪で、さっぱりした角刈り。

そのキリッとした顔が、
インタビューに答える節々で、ニコッ!っとなる。
これがまあ、
こっちまで釣られるような大きな笑顔でね。

 


「あら、おとうさん、歯がないですね?」


って、インタビュアーの人が気づくんです。


そしたら、
ちょっとだけゆるいような滑舌で……

「おれぁ甘いもんが好きだから、
 歯あ、無くなっちった、わはは!」

とにかく明るくて、チャラいんです(笑)


でも、
ぼくもつい心配になったことが、
次の質問として、出てきます。


「でも、歯がなかったら、
 好きな甘いものでも、
 食べられないのがあったりしませんか?」

と。


そうそう、
こんなに幸せそうに笑うおじいちゃんが、
食べたいものを我慢しなきゃいけない様子を
思い浮かべると、胸が痛い。

どうしてるんだろう。


そしたら、
そのおじいちゃんは、
さっきより大きな笑顔になって、


「これがな、そうでもねえんだ。
 俺なんて、硬いせんべえだって平気で食うよ?

 歯なんてなくたってな、
 無理にかまなきゃいいんだ。
 
 歯茎と歯茎のあいだでよ、
 ちょっとこう、せんべえをまわすんだよ。
 そしたら時間はかかっけど、
 それはそれでウマいもんだよ」


って、言ったんです。


マジか……!!


噛むというよりは
「グラインドさせつつ溶かす」というね(笑)

そのやり方で
食べられないものなんてほとんど無いんだ、と。


「時間かかるけど、
 俺なんてどうせヒマだしよ。んはは!」


そういって笑うじいさんの口は、
歯がない分ぽっかり穴が開いていて、
ほんとうになんでも飲み込みそうに見えました。

さわやかで、軽妙で、カッコ良かった。


ぼくにとって、まずひとつ、大きかった学び。
それは、
歯がなくなったらもう「終わり」なのかと思ってたけど、
そうでもないんだ!!
ってことです。

歯医者さんとかでよく脅されますもんね(笑)

そりゃあね、その意味はわかります。
歯が健康なまま年をとりたいとは思う。

でも、あのじいさんは、
歯を無くしてはいても、食の楽しみを失っていなかった。

その事実は、ぼくにとって、
「希望」にかなり似た励みになりました。


「最悪の事態が起きないようにしなきゃ!」
って考えて備えるのは、もちろん大事です。

でも、そればかりだと、
「未来は暗いものだ」と自分に言い聞かせる
ような根性になっちゃう。

いっぽうで、
「最悪のとき、実際、どうなるのか?
 どれぐらいなら、できるのか?」を知ることは、
ひょっとしたら、もっと大事かも知れない。

その知恵は、心のセーフティネットの機能をもつ。
未来がすべて明るく……まではならない。
けれど、
「LEDのランタンは持ち込み可」
ぐらいにはなる。

それだけでも、
「お先真っ暗」とは、えらい違いだ。

ぼくにそう思わせてくれるだけのパワーが、
あのじいさんの笑い顔には、ありました。


何かを無くすということと、
そのせいで喜びをどれだけ失うかということは、
別の問題なんだなぁ。

「○○が無くなったら一巻の終わり」

なんて思うものって、
意外といくつもあるようで……

「実は一巻の終わりってワケでは無いもの」が、
半分以上なのかも知れないね。



ではでは、くれぐれもお大事に。
ぼくもどうせ年をとるなら、
ああいうじいさんになりたい。